Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
前々から思っていた。
普段はのほほんとした性格の村瀬なのに、それとは真逆の荒々しい作品を作り出したり殺伐とした世界を表現したりするのが得意だった。
まるで村瀬の中に冷酷な悪魔でも宿ったかのように…
だけど村瀬のすごいところはそれだけじゃない、どんなジャンルにも長けていることだ。
優花はその見た目に反して女性らしい作品が苦手だったけど、村瀬は男性的な作品も女性的な作品もどちらも完成度が高い。
本当に、しがないCDショップの店員にしとくのはもったいないくらいに。
「…菜月、彼女を一度葛城さんに会わせてみたいんだけど」
「え? …本当にそのコに任せる気?」
「適任だと俺は思う」
「慧ちゃんは……本当にそれでいいの?」
「ああ」
揺るぎない目で菜月を見つめる。
菜月はしばらく口を閉ざした後、観念したように小さく息をはいた。
「…分かったわ。近々セッティングする」
「菜月…ありがとう」
「…慧ちゃんがそれほどまでに買ってるコなら葛城さんのほうは問題ないと思うけど、そのコのほうにはちゃんと話つけといてよ? いきなりこんな話ビックリするだろうから」
「ああ…じゃあ早速今から電話してみるよ」
俺は携帯を手にとって村瀬に電話をかけてみた。