Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
『モテ男子はつらいね』
このこの、と肘で突ついてくるユリカ。
あんたに言われたくないけど…
『でも私、福嶋くんの噂もう1つ知ってるよ?』
ユリカはちょっと得意げな顔になる。
俺のもう1つの噂?
『クールで無愛想でちょっと近寄りがたいけど、実は……“正義の味方”だってこと』
正義の味方…?
『1学期が始まってすぐのことだったかな。
私、偶然見ちゃったの。
駅で年配の男性がホームが分からなくてウロウロしていたら福嶋くんが声をかけて親切に連れていってあげてたトコ』
『……』
『そのおじいさんにお礼を言われたときの笑顔がすごく印象的で…なんていうかあったかくて。
…いいな…この人と仲良くなってみたいな…ってずっと思ってたの』
『先輩…』
『へへっ…なんか恥ずかしい。告白してるみたい』
ユリカは前髪をいじりながらはにかんで、最後は『以上。私しか知らない福嶋くんの噂でした!』とおどけた。
その日の別れ際、ユリカは俺にこう言った。
『福嶋くん…もしも私がピンチに陥ったときは、そのときは映画やドラマのヒーローみたいにどこからともなく颯爽と現れて、私のことを救ってね』
――それから。
そんな約束も忘れ去ってしまうほど平穏な日々を送っていた。
そして――…事件は起きた。