Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
―――…
室内に風呂上がりのいい匂いが立ち込める。
『福嶋くんも…入…る…?』
遠慮がちにそう言ったユリカの、湯上がりの火照った顔もバスローブ姿も照れてまともに見ることができず…
『ああ』
と、相変わらずのそっけなさで俺は逃げるようにバスルームに飛び込んだ。
熱いシャワーを頭から浴びながらこのあとのことについて考えをめぐらす。
別にそういうつもりでユリカをこんなところに連れてきたわけじゃない。
ただ、なるべく人目には晒したくはなかった。
路地裏で男に襲われ泥まみれになっていたあげく、制服が無残に引き裂かれボロボロになっていたユリカの姿を。
だから俺は…
恐怖と寒さで震えていたユリカを連れてラブホテルへと入った――。
――キュッ…
蛇口を締めた音がバスルームに響き渡る。
悶々とあれこれ考えていたせいか普段より長めのシャワーだった。
バスルームを出るとソファに落ち着かなそうに座っていたユリカと目が合った。
『落ち着いた?』
『うん…』
『ならいい』
ユリカから離れて座る。
『…なんか食う?』
『…ううん』
『そういや塾の時間は? 平気なわけ?』
『…今日は休む』
『…だよな』
あんなことがあったのに気分的に行けるはずないよな。