Distance
さして気を遣ってる様子も見受けられんのに、全体的にいっつも抜け目なくお洒落で、友達も多く、綺麗所の女がわんさか寄って来る。
恋愛経験の薄い私には、遊びなのか本命なのかわかんないけど、寿士は誘いを拒むことをしない主義らしい。


「けどさー、恥ずかしくないの?あんな街中でイチャイチャしちゃって。あんなこと、部屋でやりなさいよね」


腕を組んで私は、ぴしゃりと言い放った。

私が通りすがりに見る限り、どうも女性の方がやたら積極的に寿士に引っ付いていたようだった。肩出しミニスカのセクシーなスタイルで。…すごく、綺麗な人だった。


「あんなこと、って?」


回想していた私の至近距離で、寿士は首を傾げる。


「……だからその、破廉恥…な行為とかをだね!ゴニョゴニョ…」
「はあ?そんな清純ぶって言葉濁してるけどなほだってな、今危なかったぞ?俺が助けなきゃ」


へへんと顎を上げ、上から目線で言った寿士の顎に、私は必殺頭突きをお見舞いしてやった。
ごん!と、鈍い音がした。


「痛ってーな、石頭!」
「別に、寿士なんかに助けて欲しくなかったし!」


私だって痛いんだ、と思っておでこを擦ったら、じんわり目の奥が湿ってきた。


「…そーかよ。つか、ろくな経験もないお前に、俺だってとやかく言われたかねーし。」
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