マリッジブルーの恋人たち
 皆も驚いていたが、それ以上に俺は驚いていた。

 そして、目の前に差し出された、玲奈のために買った婚約指輪を見て、意味が分からなかった。

「はっ?」

 怪訝な顔をし玲奈を見ると、差し出された物が婚約指輪だと分かった周りがどよめく。七瀬がどんな顔をしているかは分からないか、伊久斗からはため息が漏れ、同期の3人は今から修羅場になりそうか予感にわくわくしている感じが伝わってくる。

「結婚式までの3ヶ月、これ預かっといて。」

「これ、婚約指輪だろ?何言ってんの!?」

「私の指にこれがあると、他の女に手出せないでしょ?」

 その言葉を聞くと、同期もヤバイって雰囲気になり始め、俺も隣の女性の腕を振り払う。

 まさか聞かれていたとは思ってなかった。

 それ以前に、あの言葉の続きをちゃんと言わなかったことを後悔した。

「玲奈、違うっ!!」

 慌てる俺を玲奈は冷ややかな目で見下ろした。

「損してないって?……後悔しないように3ヶ月好きにしたら?」

「だからっ!!」

「私も好きにさせてもらうから。」

 そう言って受け取れない婚約指輪を手に握らせられた。

 何が起きたのか分からなかった。

 好きにさせてもらうってなんだ……。

 玲奈なら、俺の性格も分かってるから、持ち上げて一気に叩き落とすことも知っている。

 なのに、こんなことは初めてだった。

 
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