マリッジブルーの恋人たち
「いつもは、週末、玲奈が冷凍できる作り置きのおかずをまとめて作ってくれて、それを1週間食べるんだよ。今週は接待が多いから、やっと玲奈のご飯にありつけると思ってたのに……。」

 ブツブツふて腐れている昴は、ビールを一気に飲み、ネクタイを緩めながらソファーにふんぞり返った。

「週末も結婚式の準備をして、接待ゴルフとかがあって、ゆっくり会えないし……抱いてないのにさ。禁欲生活がまだ続くなんて、堪えられない!!」

「はぁ……結局のとこ、欲求不満なわけね。」

 呆れた顔の伊久斗に、"家に帰れば妻がいるお前にはわからんよな"と、しらけた顔で言われた。

 ここ最近、昇進が決まり忙しいのは伊久斗も知っていたし、中々二人で会えていないことも静華から聞いていて分かっていた。

 だから、今日が二人で久しぶりにゆっくり出来ると浮き足立っていた昴が、なんであんなことを話したか不思議だ。

 本人に聞いても、はっきりした返事はなく本人も分からないようであった。

「俺は、玲奈だけで満足してるし、今さら……言わなくても分かってる筈だし、指輪返すことないよな?」

 同調を求められた伊久斗は、"指輪"の部分にだけは、同意見だったため、昴の意見に同調するような返事をしてしまった。

 この時、ちゃんと意見を正しとくべきだったと思うのは、随分後になってからだった。
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