マリッジブルーの恋人たち
 翌日、出勤すると二人は噂の的だった。

 いつもは最寄り駅から待ち合わせして出勤するのに、別々に出勤し、玲奈の手にはお弁当が入ったいつもの袋はなく、左指に指輪もない。

 そのため、女性人は喜んでいた。

 玲奈は気にすることなく開発部に向かった。
 
 開発部は、他の部署に比べてこじんまりとしたスペースで、グループごとに仕切られている。企業秘密もあるため、セキュリティもしっかりとしているため開発部に入ってしまうと、ほとんど外部の人間に会うことはない。

 だが、営業部は1課~3課まで、パーテーションで区切られたガラス張りのオフィスのため、中の様子が廊下から丸見えなのだ。

 玲奈はほとんどを開発部で過ごすため、嫌な噂を聞いたり見たりするのは、お使いを頼まれて開発部を出たときくらいだ。
 
 ふと玲奈は、自分より噂の標的になる昴を思い、"今日は、昴大変だろうな。"と考えていた。

「武藤、営業3課に資料届けて、軽く説明よろしく!」

 玲奈を指名した課長は、悪巧みしている顔をして資料を渡してくる。

 昴は、営業2課だが、3課に行くには2課を横切らないといけなかった。じとって課長を見たが、"早くいけ!"とあしらわれ、出たくない開発部から足を踏み出した。
< 23 / 86 >

この作品をシェア

pagetop