マリッジブルーの恋人たち
「失礼します。」

　控えめに声をかけ中に入るが、噂の当人の登場で視線が一気に玲奈に注がれた。

　昨日、あの場にいた昴の後輩たちは気まずそうにしているが、他の人物たちは目を輝かせ二人を見比べている。

「昨日は、参加出来なくてごめんね。」

　昴の後輩で、自分とも仲良くしてくれる女の後輩にこっそりと耳打ちすると、"いえいえ、気にしないてください。"と、気まずそうに返された。

　昴は、現課長との引き継ぎに追われているようで、こっちを見る余裕もないようだ。

　昨日の今日で顔を合わせるのは少し気まずいため玲奈は、ホッとしながら３課に足を進めた。

　資料の説明が終わる頃には、お昼になっており随時手があいた者からランチになる営業部では、もう半数以上がランチに言ったようで、ガランとしていた。

　２課の方では、何人かの女性にランチに誘われる昴の姿があったが、イライラしているようで、いつもの営業スマイルがひきつっていた。

　囲まれてる間に部屋を出ようとするが、営業部のドアの前で、気がついた昴に呆気なく掴まり、その様子を面白くなさそうに見ている比菜子の姿があった。

「玲奈！！」

「……何？」

　咄嗟に追ってきたのであろう。次に続く言葉が出てこないようであった。
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