マリッジブルーの恋人たち
 でも、考えれば考えるほどムカムカしてくるのも事実だ。

 いつもなら分かってくれることに、あんな風に言わなくてもいいじゃないか。指輪を返さなくてもいいじゃないか。と、思ってしまうのだ。

「女性はマリッジブルーあるって言うし、マリッジブルーなんじゃない?」

 そう諭すように言われるが、考え込んでいるため昴には聞こえていないようだ。

 そこに、るんるんと今にも鼻唄を歌いだしそうな比菜子が、スキップしながら近付いてきて、昴の腕に自分の腕を絡ませてきた。昴は、振り払おうとはしない。

「麻生さん~!彼女から許可も出たことだし、ランチいきましょ~。」

「こいつと行くから。」

「じゃ~夜、飲みに行きましょう!!」

「……1杯だけだからな。」

「やったぁ~!!」

 その約束だけ取り付けると、嬉しそうにオフィスから出ていった。

 今まで誰に誘われても、1対1でランチさえも行ったことのない昴が、夜の誘いにのったことで、女性陣は色めきだった。

 伊久斗は、その様子を眺めながら"結婚前に何やってんだ。""ヤバイだろ。"と思い、また静華に怒られる予感がした。

 案の定、瞬く間に噂になり、耳に入ったため静華にすごい剣幕で怒られ、一日にして、玲奈のー浮気黙認宣言ーがオフェンス内を駆け巡ることになった。

 この時、結婚式まで3ヶ月だった。
< 29 / 86 >

この作品をシェア

pagetop