マリッジブルーの恋人たち
　俺はスーツのジャケットを脱ぎ、考えなしでワイシャツを脱いで、洗面台に水をはりワインの染みを擦り、浸けおきした。

　頭の中にあったのは、玲奈から誕生日に貰ったワイシャツの染みをどうにかして取ることだった。

　だから、自分がズボン１枚だけだと言うことをすっかり忘れていたのだ。

「落ちました～？」

「落ちない。てか、部屋についてから空けろよ……。」

「ごめんなさい～。あっ私もちょっとかかったので、洗面台いいですかぁ？」

　そういわれ、かかったかなぁ？と思いながら洗面台出ると、そそくさと七瀬は洗面台のある扉を閉めた。

　暫くしたらドアを控えめにノックする音がしたため、てっきり仲山かホテルマンだと思い込み、上半身裸にズボンと言う間抜けな格好で、部屋の扉を空け、ノックした人物を見て、驚いた。

　それは、相手もそうみたいだ。

「えっ！？玲奈……。」
「えっ？昴？」

　二人の声は重なった。

「なんでここにあんたがいるの？七瀬ちゃんの部屋でしょ、ここ？」

　玲奈の後から聞こえたのは、静華の声だった。

　悪いことをしている訳じゃないが、思いもよらない展開に、頭を悩ませた。"おい。"俺はもう一人人物がいることに気がつかないでいたが、聞き覚えがある声が聞こえた。
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