マリッジブルーの恋人たち
「えっ、玲二?」

 思いもよらない人物がもう一人。玲奈を溺愛する玲奈の双子の兄、玲二もその場所にいたのだ。

 この双子の兄、玲二は、顔のパーツパーツが、キリッとしているが玲奈のことを溺愛し、付き合う上で、結婚する上で両親より手強い相手だったのだ。

 なんでここにいるのだろうと、考えを巡らせていると俺は重大なことに、今さらながら気がついた。

 この格好はヤバいんじゃないのか?

 ワインがかかって、ワイシャツ脱いで洗った。ただそれだけの事実なのに、何故か冷や汗が出るのは今のギクシャクした関係のせいなのか。そう考えを巡らせていると、後でガチャと音がした。

「誰か来ました~?」

 緊張感かまるでない七瀬の声がした。誰かって普通ならホテルの人間か仲山と思うだろうと、ため息をつくと、部屋の外にいる玲奈たちは、俺の後を見て、呆然としている。

 その視線を追うように振り返ると俺も驚いて、目を見開いた。

 七瀬は、短めのバスローブを身につけ、洗い立てのように髪を濡らし、気だるそうに立っていたのだ。

 俺もズボンしか履いておらず、情事の後を思わせるには十分の材料だ。

「……これ、彼女に頼まれた資料だから。」

 慌てて振り向いて、説明しようとする俺に、業務的に資料を渡してきた玲奈の顔は、少し青ざめていたような気がした。

「えっ?資料?」

 手渡された資料を受けとる。

「玲奈、帰るぞ。」

「………。」

 資料を確認している隙に、玲二が玲奈の手を引くのがわかる。

 慌てて追いかけようとするが、自分の格好を思いだし、戸惑っていると、すごい形相の静華から頭を叩かれた。

「何やってんの!!さいてー!!」

 俺に説明する機会を与えてくれようとはせずに、状況だけで頭を叩かれたことに、イラッとしてしまうが、玲奈が何も言わずに、責めることもしてくれない事実の方が、俺は辛かった。
 
 本当にこの時ほど、結婚に危機を感じたのは初めてだ。

 後の七瀬がニヤリとしたことにも気がつかないで、俺はただ、呆然としていたのだ。

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