マリッジブルーの恋人たち
 昴が1泊2日で出張に行くため、もしかしたら土曜日少し会うことが出来て、日曜日は二人で打ち合わせに行けるかもと、微かな期待をしていた私は、少し落ち込み、土曜日は休日出勤をしていた。

 まぁ落ち込むのは別に理由があった。

 今回の同行者の中に、七瀬比菜子がいるからだ。もちろん、後輩の仲山さんも一緒だと聞いてはいるが、ムカムカする気持ちはとめられなかった。

 七瀬比菜子は入社した時から、何かと絡んでくる女性だった。

 私がクールビューティーと言われる静華と親友なことも気に入らないし、比菜子が一目惚れした昴と付き合っていることも許せないようだった。
 
 昴が見てない所で嫌がらせされたり、嫌みを言われたりしたのは、数えられないくらいだ。

 しかし、長く会社に居れば彼女を擁護し、けしかける人間も出てきた。

 そのせいか、誰が見てようがお構いなしで腕を絡ませて見たり、同棲してる家に押し掛けたり、平気でするようになった。

 あのオフィスでの騒動の後、比菜子と飲みに行ったと聞いたのは、次の日の朝、比菜子本人からだった。

『あっ、武藤さぁ~ん。私、昨日、麻生さんと飲みに行ったんですぅ。やっぱり結婚が近づくに連れて、冷静になると、人って自分にも正直になるんですね?……本当は、麻生さんも自分には違う人がいいんじゃないかって思ってるんじゃないですかぁ?』

 何も言わないことをいいことに、勝手なことを言い放つ彼女を今、思いだすだけでも腹が立つ。
< 38 / 86 >

この作品をシェア

pagetop