マリッジブルーの恋人たち
 後輩の誤解は後で解けばいいと思い、昴は、部屋の鍵と濡れたシャツとスーツを羽織り、比菜子を振り返った。

「あることないこと言ったら、こっちも考えがあるからな。」

 低く冷たい声に、比菜子はビクリとしており、初めからこうすればよかったと、昴は、何度も思ったのだった。

 比菜子との決着が着いたにも関わらず、玲奈とは相変わらずで、打ち合わせにも自分に連絡もせずに休んでいる。

 昴は、どうすればいいのか悩んでしまっていた。 


*******

 玲奈はベッドに横になり、見知らぬ天井を眺め、何も考えられずにいた。

 今の自分の状況も、よく分からない。

 頭の中が鮮明になるにつれ思い出すのは、昴とあの子が一緒にいたこと。

 上半身裸の昴と、バスローブに身を包んだあの子。

 昴のあの様子を見ると、あの子がわざわざ見せびらかすために、自分が呼び出されたように感じ、すごく滑稽で惨めだった。

 あのあと動揺した玲奈は、ホテルを出ると同時に、玲二に持たれるように倒れてしまった。

 知らないうちに、そうとう堪えていたようだ。

 そこで記憶が途切れ、一緒にいた玲二と静華に迷惑をかけたなって思っていると、部屋の扉が空いたのだ。
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