マリッジブルーの恋人たち
 ー裸で抱き合ってるの見たー

 それの言葉が衝撃的過ぎて自分の耳を疑ってしまった。

 確かにあの時、二人に何かあったのかもしれないと思ってしまったが、どこかでそんな筈はないとも思っていた。

 昴にーちゃんと受け止めるーと、言ったが動揺する自分を感じて、まだ、覚悟が足りないと自覚してしまった。

 彼女の言葉に何も言えないでいると、代わりに静華が口を開いた。

「食堂で話す内容じゃないでしょ?ちなみに、朝の車の男は玲奈の双子の兄よ。玲奈は何もやましいことなんて、してないんだから。」

 その言葉に、涙も止まったようで周りのざわめきを確認すると、"ごめんなさいっ"と慌てて食堂から去っていく彼女を複雑な気持ちで見送った。

 周りはすでに自分達の噂で溢れ帰っている。

『やっぱりあの麻生さんも彼女では満足出来なかった』
『彼女と七瀬さんなら、七瀬さんがお似合いだ』
『浮気が本気になった』

 昴と七瀬比菜子を擁護する声が聞こえる。

 後輩の台詞はみんなに聞こえているが、静華が話したことは聞こえていないようで、玲奈を責める声もチラホラ聞こえだした。

「……玲奈。大丈夫?」

 心配そうに覗き込む静華に、"覚悟しなきゃね"と答えることしか出来ず視線を合わせることも出来なかった。
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