マリッジブルーの恋人たち
ー裸で抱き合ってるの見たー

 そんなことを仲山が玲奈に話したとは知らず、外で伊久斗と昼を済ませて会社に帰ってくると、周りはすでに自分達の噂で溢れ帰っている。

『やっぱりあの麻生さんも彼女では満足出来なかった』
『彼女と七瀬さんなら、七瀬さんがお似合いだ』
『浮気が本気になった』

 俺と七瀬比菜子を擁護する声が聞こえる。

「昴。大丈夫か?」

 心配そうに聞いてくる伊久斗に、食堂でのことを知らない俺は、またもや簡単に考えてしまい、"いつものことじゃねーかよ。今に始まったことじゃない"と答え、真相を見ようとはしなかったのだ。

 自分の席に着くと、"あの……。"と落ち込んでいる様子の仲山から声をかけられたが、営業先でトラブルがあったと報告があったため、彼女の話を聞くことが出来なかった。

 トラブル先に向かう途中、廊下ですれ違った七瀬が、朝とは違いいつもと同じ笑顔で"いってらっしゃ~い!"と声をかけてきた。

 違和感もあり、疑問も持った。

 だが、とにかく早く仕事を終えたい、玲奈に逢いたいと逸る気持ちを押さえられず、深く考えなかった。
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