マリッジブルーの恋人たち
 長い沈黙に堪えられず、思い口を先に開いたのは、自分だった。

「玲二から聞いた。週末体調悪かったんだって?大丈夫か?」

「うん、大丈夫。」

 どんな風に会話をしていたか、何て声をかければいいのか分からず、週末のことを謝るより先に自分の気になることを聴いた。だが、返事だけで会話にもならない。

「……玲二に理由聞いても、玲奈に聞けって言うばかりでさ。どっか悪いとか?」

 いつもなら、ずけずけと聞くことが出来るのに、窺うように聞くことしか出来ず、情けない思いだ。

 かつて今までにこんな気まずい雰囲気になったことはあっただろうか。

 あるとすれば、初めて自分の気持ちを伝えた、遥か遠い学生時代だと思うと、考えていると、玲奈から、一枚の紙切れを渡された。

「……これ……。」

 玲奈は俯いたままの状態で、それ以上は言わなかった。

 渡された紙を見て、俺は目を見開き、勢いよく紙切れから玲奈に視線を向けた。

 手渡された紙切れは、まだ人の形にもなっていない子どものエコー写真で、凄く嬉しくて嬉しくて、思わず"俺も父親か!!"と言ってしまった。

 しかし、玲奈の口から出たのは、"産んでいいのかなぁ……"と悲しい言葉だった。
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