マリッジブルーの恋人たち
 見た目派手で遊んでると思われる俺だが、女性経験は皆無のチェリーボーイだ。

 玲奈が俺がリードしてもらえると期待してたら、と思うと中々手を出せずいた。

『あんたバカなの?玲奈がそんなこと期待するわけないじゃない!それに、あの子には比べる相手がいないんだから上手いとか下手とかわからないわよ!?優しく抱き締めてあげたらいいのよ!』

 そう背中を押してくれたのは、玲奈の親友・俺の悪友の静華だった。

 クリスマスイヴの夜、二人でイルミネーションを楽しんだあと、ちょっと高めのレストランで食事して、予約したホテルに向かった。

「わぁ~。素敵ね!!キャー、海が見える!部屋の中にクリスマスツリーがある!」

 はしゃぎ回る玲奈を見ながら、俺の心中は穏やかではない。

 何を話しかけられても上の空の俺に、玲奈は顔を覗きこんで、"疲れた?"と聞いてきた。

 俺の頭の中は、玲奈との愛を確かめる行為の手順で埋め尽くされており、"そんなことないよ。"と言える余裕も優しさも持ち合わせておらず、近付いてきた玲奈をベットに押し倒してから、はっとした。

「!!!!悪いっ。」

 びっくりして息を飲んでいる玲奈と目が合い、二人で見つめ合い、お互いに目がそらせなくなる。

 気がついたら、玲奈にキスをしていた。

 未だに慣れない、たどたどしいおままごとのようなキスに、一生懸命答えてくれる玲奈に対して、俺はカミングアウトした。
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