あの夏の続きを、今
プロローグ 〜4度目の夏〜
【2017年 6月上旬】
雲一つない、澄んだ青空。
透き通った昼下がりの陽の光。
────また、夏がやってきたんだ。
私が一番好きで、一番大切で、そして一番思い出深いこの季節。
新しい夏の始まりが、「あの頃」の思い出を運んでくる。
決して忘れることのない、あの3年間のこと。
私が私で在る理由を見つけた、あの夏のこと。
今となっては懐かしい思い出となったあの日々を思い出しながら、私は木漏れ日の降り注ぐ道を歩いて、ある場所へと向かう。
────あの頃、私の目の前には分かれ道があった。
悩み、傷付き、考え抜いた末に、私はその片方を選んだ。
けれど、選んだ先にある「今」は、あの時思い描いていた結末とは、少し違うものになっていた。
新しい夏の始まりを、このような形で迎えることができるなんて、一体誰が想像できただろう。
目的地に着いた私は、迷わずその建物へと足を踏み入れる。
────『約束』を果たすため。
その建物の入り口に置かれた手作りの立て看板には、こう書かれている。
『東神高等学校吹奏楽部 定期演奏会』
────4度目の夏が、始まる。
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