あの夏の続きを、今


学校に着いて、自転車置き場に自転車を止めてから、教室のある4階へ。


レナと別れて、私はB組の教室に入る。


まだ時間が早いからか、教室の中にいたのは、リサだけだった。


「リサ、おはよう!」

「あ、志帆…」

「ん?リサ、何か困ってるような顔して……どうしたの?」

「実はね、噂を聞いたの……」

「噂?」

「ちょっと来て」

リサは私を手招きすると、耳元でそっと囁いた。


「志帆って、まだハルトのこと好きなの?」

「うん、そうだけど」


リサは既に、私がハルトのことを好きだということを知っている。


「実はね、瀬川くんに彼女ができたって噂を聞いたの。噂だし、本当のことかどうかは分からないんだけど」


「えっ…………!?」


あまりに突然の言葉に、私はしばらく身動きが取れなくなってしまう。


そんな……


ハルトに……彼女が……?



腕がガクガクと震えている。


「ど、どうしよう……」

「でも、本当かどうかは本人に聞かないと分からないもんね。志帆、どうするの?」

「私……私…………」


どうしよう。


もしもハルトに本当に彼女ができたのなら。


考えたくない。



嘘であって欲しい。



────怖いけど、本当のことを確かめずにはいられない。


私は居ても立ってもいられなくなって、教室を飛び出した。


「あっ!ちょっと!志帆ーー!」


慌てるリサの声を背にして、私は駆け出した。
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