あの夏の続きを、今
そして放課後。
ため息をつきながら蒸し暑い音楽室の中に入ると、椅子の数の少なさが目に付く。
なんて寂しい光景なんだろう、と一瞬思ってから、ああ、そうか、もう3年生は引退したから来ないんだ、と気づく。
既に3年生が引退してから半月経っているのに、部員の数だけ並んでいる椅子が極端に少なくなって、寂しくなってしまったこの光景にはまだ慣れきっていない。
特に────松本先輩がいないことには。
私にとって松本先輩は吹奏楽部の先輩の中で誰よりも長い時間を一緒に過ごしてきた人だから、その存在の重みは大きい。
私のこれまでの吹奏楽部での日々、私の奏でる音は、松本先輩によって支えられていたといっても過言ではない。
そんな松本先輩が、もうここに姿を現すことはないなんて。
誰よりも華やかで美しいあのトランペットの音がここに響くことも、もうないなんて。
未だに信じられない。