あの夏の続きを、今
換気のため、音楽室の西側の窓を全開にすると、過ぎ去っていく夏を惜しむようにツクツクボウシが一生懸命に鳴いているのが聞こえてくる。
東側の窓も開け放つと、少なくなった椅子の間を、夏の終わりを告げる風が吹き抜けていく。
ホワイトボードの隅には、《文化祭 中庭ステージ 演奏曲目(仮)》と書かれていて、その下には流行りのJ-POPやディズニーの曲などの曲名が並んでいる。
今、吹奏楽部は、文化祭に向けて、ここに書かれている曲を練習している。
椅子に座って譜面台やら楽譜やらを準備しながら、出欠が始まるのを待っていると、隣の席にカリンが座った。
「あれ?志帆、なんか今日、顔が暗いよ」
「えー、カリンまでそんなことを………私、そんなに思ってることが顔に出る人なのかなぁ?」
「わかんないー、でも、志帆はクールなように見えて、実は結構思ってること顔に出てたりするよ~」
「えー、そうなのー!?やだー、恥ずかしい~」
そう言って私が両手で顔を覆う真似をすると、カリンは「大丈夫だって~、そういうの可愛いから!」と言ってから、「それで、何かあったの?勘違いだったらごめん」と言って、私の顔を覗き込んでくる。
「カリン……私……」
口を開きかけたその時、部長さんが「出欠をとりまーす」と言ったので、「じゃ、また後で」と言って、二人とも前に向き直った。