あの夏の続きを、今
小さな綿雲の浮かぶ、透き通った空を見上げながら、カリンは話す。
「カリン、恋とかしたことないから、こういう時ってなんて声かけたらいいのか分かんないけど……」
そこまで言ってから、再びカリンは私のほうに向き直る。
「志帆はこれからまた、絶対いい人に出会えるはずだから!今回はたまたま運が悪かっただけだって、そう思えば、いいんじゃない?」
「そうだね………また、いい人、いるのかな……」
「志帆ならきっと見つかるよ!」
「私のこと好きになってくれる人……そんなに……いるかなぁ………」
「大丈夫!志帆は優しいし、大人っぽいし、顔は可愛いし、頭も良い!」
「別に、そんなにお世辞並べなくたって大丈夫だよ」
「お世辞じゃないもーん!」
そう言いながらカリンは、子供みたいにぷーっと頬を膨らませる。
「練習戻ろっか、早く始めないと先輩に怒られちゃう」
「だね」
カリンが歩き出したので、私はその背中に向かって小さく呟く。
「ありがとう、カリン」
面と向かって言うのはなんだか照れくさかったので、わざと聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそっと言った。
その声が届いていたのかどうかは分からないけれど、カリンはそのまま自分の練習を初めたので、私も基礎練習を始めた。