あの夏の続きを、今



クラスでの仕事を終えてから、私は音楽室に行き、昼食を食べてから、吹奏楽部の中庭ステージの準備をする。


楽器と譜面台を用意してから、チューニングと音出し。


部員みんなが集まったところで少し合奏をしてから、楽器や椅子をステージに運んでセッティング。


けれど、その間もずっと、「無意識の感情」は押さえつけられるどころか、ますます外に出ていこうとする。


────こんなこと、あるはずないんだから。


同じパートだからって、そう簡単にこんな感情、生まれてくるはずないんだから。


笑えるほど単純なこんな展開がいとも簡単に起こるのは、きっと漫画や小説の世界だけ。現実はそれほど単純ではないはず────


そう、自分自身に言い聞かせる。



そして、いよいよ中庭ステージの本番の時間。


私は部員たちと共にステージの椅子に座る。


ステージの前の芝生には驚くほどたくさんの人が集まっている。


それだけではない。


あちこちの教室のベランダや渡り廊下から、色んな人がこのステージを覗いている。


A組の教室のベランダには、王子様の衣装のままのハルトや、お姫様の衣装のままのレナの姿も見えた。


そして、芝生の最前列は、元吹奏楽部の3年生の先輩たちで埋め尽くされていた。


もちろん、その中に松本先輩の姿も見えた。


胸のあたりが、きゅうっ、と苦しくなる。
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