あの夏の続きを、今


そして、西島先生の指揮で、私たち吹奏楽部のステージが始まった。


観客たちが皆、私たちの演奏に合わせて手拍子で盛り上げてくれる。


今までで一番賑やかで楽しい本番だ。


けれど────「無意識の感情」は、私をずっと邪魔し続けていた。


油断すれば視線が勝手に松本先輩のほうへと動いてしまう。


そして、先輩と一緒にいるたくさんの女子の先輩が視界に入ると、胸がぎゅっと、締め付けられるように苦しくなる。


この気持ちは一体何なんだろう。


どうしてこんな気持ちになってしまうんだろう。


────考えてたって、答えは一つしかないのに。


だけど、認めたくないのだ。


認めたくない、絶対に。


私はその全てを忘れようと、トランペットの音に乗せて必死に身体の外へと飛ばそうとする。


けれど、忘れれば忘れようとするほど、「無意識の感情」はどんどん強くなりながら、私の心を締め付ける。


そして、アンコールも含めた、全ての演奏が終わった。


先生の合図で立ち上がると、四方八方から歓声と拍手が降り注いでくる。


この瞬間だけは、「無意識の感情」を忘れ、観客を楽しませるという嬉しさに浸ることができたが、それも一瞬のことだった。
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