あの夏の続きを、今
よく冷えたペットボトルを受け取ってから、私たちは松本先輩と別れ、音楽室へと戻る。
ちょうど、打楽器運びという重労働を終えて喉が乾いていたので、私は自分の椅子に座ると、早速松本先輩に貰ったレモンジュースを一口二口飲む。
ジュースはよく冷えているはずなのに、一口飲むごとに、胸の奥がぐっと熱くなっていく感じがする。
ほどよい酸味と相まって、心の奥底がきゅうっ、と締め付けられるような感覚がする。
思い出すのは、さっきの、そして今までの、あの優しい笑顔ばかり。
これが松本先輩からの差し入れ。そう思うだけで、指先が僅かに震えて、ペットボトルを持つ手にうまく力が入らない。
眼鏡の奥に見える、あの優しい眼差しが、何度振り払おうとしても、心の中に蘇ってきてしまう。