あの夏の続きを、今

「カリンちゃん、志帆ちゃん、来てきて～」


部長さんから楽譜を受け取ったアカリ先輩が、私たち1年生を呼ぶ。


トランペットパートの2年生の先輩はアカリ先輩だけだから、3年生が引退した後は自動的にアカリ先輩がパートリーダーとなった。


「じゃ、今から楽譜配るんだけど、……実はうちには考えがあってね」


考え？何だろう？


アカリ先輩は続ける。


「この曲は1stと2ndの2つのセクションに分かれてるんだけど、うちが1stをやって、そして、志帆ちゃんとカリンちゃん、どっちか1人を1stに、もう1人を2ndにしようと思ってるの。


それで……これからまだたっぷり練習期間があるから、カリンちゃんと志帆ちゃんには1stと2ndの両方を練習してもらって、1年生が入ってくる頃になったらオーディションをして、2人のセクションを決めようと思うの」


「えぇーーー！？オーディションーーー！？」


カリンが心底驚いた声で叫ぶ。


「そう、2人にはライバルになってもらうんだよ」


アカリ先輩がそう言うと、カリンは「やだーー！オーディションなんてやだーー！ライバルなんてやだーーー！！」と小さい子供みたいに駄々をこねながら、私にしがみついている。


そんなカリンとは対照的に、私は「ライバル」という響きになんだかワクワクしていた。


「ライバルかぁ…なんか、青春って響きするし、楽しそうじゃない？

良き仲間、良きライバルとしてこれからもよろしくね、カリン！」


私がそう言っても、カリンは依然として「やだーーーー！」と言い続けていた。