あの夏の続きを、今
────昼休み。
外はいつのまにか、しとしとと雨が降り始めている。
私は机の上に、今朝配られたコンクールの楽譜を広げ、リサから借りたスマホで音源を聴く。
曲名は「せんばやま変奏曲」。
タイトルからわかる通り、「あんたがたどこさ」の変奏曲だ。
和風な曲調で、誰でもよく知っている「あんたがたどこさ」のメロディーが使われているから、聴きやすく、頭の中にすっと入ってくる。
私は曲を聴きながら、1stと2ndの楽譜を見比べる。
全体的に、2ndがメロディーを吹いている所で、1stが高い「ミ」の音を吹き続けている部分が多い。
前田先輩は、「上手いほうを2ndにする」と言っていた。
この曲は2ndのほうが1stに比べてメロディーを吹く部分が多い、ちょっと特殊な曲だというのと、2ndは来年入ってくる1年生も吹くことになるから、指導をしなければいけない、というのが理由らしい。
私は松本先輩みたいに輝かしい高音を吹ける1stがやりたい、という思いがある。
けれど、上手いほうが2ndになるのなら、2ndのほうがいいのかもしれない。そっちの方が、メロディーは多いし。
私は一体、どちらになるんだろう。