あの夏の続きを、今


曲を一通り聴き終えてから、イヤホンを外し、窓の外を眺める。


雨は当分止みそうにない。


どんよりと暗い窓の外を眺めながら、私は松本先輩のことを考えた。


────松本先輩のことが好き。


それは紛れもない真実だと気づいてしまった。


けれど、気づいたところで、これからどうすればいいんだろう。


松本先輩に会いたい────あれからずっと、そう思っている。


けれど、先輩はもう部活を引退してしまったから、会う機会はきっともうない。


でも、何とかしなければ、あっという間に先輩は卒業してしまう。


どうすればいいんだろう。


文化祭が終わった後は、校内でも校外でも、3年生と会える可能性はゼロに等しい。


私たち1年B組の教室があるのは、西棟の4階。先輩のいる3年D組の教室があるのは、この棟ではなく、中央棟の1階。離れすぎている。


しかも、私たちの教室がある西棟の上の方には、3年生が行くような特別教室はないし、3年生の教室がある中央棟にも、1年生が行くような特別教室はない。


そもそも他学年の教室の近くにはあまり行かないように、と生活指導の先生が言ってるし……


靴箱と昇降口も、1、2年生と3年生では場所が違うから、帰りに3年生と会うこともない。


自転車置き場の場所も、1、2年生と3年生で全然場所が違う。


だから、普通に生活していれば3年生と会うチャンスなんかないし、3年生に会えるような場所に1年生が行くのはあまりにも不自然なのだ。


だけど、何もしないわけにはいかない。


先輩が卒業する前に、何か行動を起こさなければ、きっともう先輩と会うことはできないだろう。


けれど、もし仮にどうにかなったところで、私は携帯を持っていないから(高校生になるまでは買わない、と親に言われている)、どちらにしても音信不通になってしまう。


というか、そもそも相手は受験生なんだから、よっぽどのことがなければ何をやってもだめだろうし………


本当に、どうすればいいんだろう。
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