あの夏の続きを、今
私はカリンに全てを話した。文化祭での出来事。「無意識の感情」のこと。気づいてしまったにもかかわらず、どうしようもできないということ。
「だから、私、これからどうすればい…」
「えっ、待って、それはないと思うよ!!」
「…………!?」
私が全部言い終わらないうちに、カリンの口からは全く予想だにしていなかった意外な返事が飛び出した。
「ないない、そんなことは絶対ないと思うよ!緊張してただけだって!」
カリンの瞳を見れば、その言葉が嘘や冗談ではないことはすぐに分かった。
そんなことは、絶対ない────
温和な性格で、相談なら何でも受け入れてくれそうなカリンにしては、あまりにも意外で、そして辛辣な言葉だった。
ぐさっ、と音を立てて、その言葉が胸に突き刺さる。
「う、うん、確かに、そうかもね。なんでもない。忘れて」
言葉の破片が突き刺さったところが、ずきん、と痛む。
緊張してただけ────
確かにそうなのかもしれない。
あのカリンが全力で否定するんだから、きっと、松本先輩に恋だなんて、よっぽどありえないことなんだろう。
やっぱりこれは、違うんだ。
恋なんかじゃないんだ。
抱えてきた感情をもう一度、胸の奥底に押し込み、しっかりと蓋をする。
早とちりしてしまった自分が恥ずかしくてたまらない。
出欠が終わった後、体育館の横の屋根の下で、その恥ずかしさと今までの感情を忘れようと、トランペットの音に乗せて必死に飛ばした。
だが、昼から振り続けている雨がなかなか止まないのと同じように、私の気持ちはなかなか晴れてはくれなかった。