あの夏の続きを、今


仕事を終えてから私は教室に戻り、今日もまた「せんばやま変奏曲」の音源を聞こうと、リサからスマホを借りた。


机の上に楽譜を広げて、曲を再生しようとすると、ふいに、リサが私の顔を覗き込んできた。


「志帆……もしかして、何か悩み事?」


……ぎくっ。


「ううん、なんでもないよ」


私がそう言ってごまかすと、リサはにやりと笑って続ける。


「さては、志帆………恋してるね?」


……うっ。図星だ………


「志帆、わかりやす過ぎ!顔に『図星です』って大きく書いてあるみたい!」


流石リサだ……私の心に何か変化があれば、すぐこうやって察してしまう。しかもとても正確に。


まあ、リサは女子バスケ部で、出身校も違うから、松本先輩のことはよく知らないはず。だから、リサには本当のことを言ってもいいかもしれない────


そう思って、私はリサに、すべてを話すことにした。


今まで抱いてきた「無意識の感情」。その正体に気づいた文化祭。そして、カリンに言われたあの言葉。一旦抑え込んでしまった気持ち。


これは、恋なのか、恋じゃないのか。
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