あの夏の続きを、今
真実と裏切り
【2014年 12月上旬】
────結局、それからずっと、私の恋を進展させる方法は見つからず、何もできないまま12月を迎えてしまった。
私の本当の気持ちを知っているのはリサだけ。
カリンはもちろん、他の吹奏楽部員にもこのことは決して知られたくない。
松本先輩のことを知る人にとっては、きっとこの恋はよっぽどありえないものなんだろうから。
そして、リサ以外の友達にも、自分からこれを打ち明けられる勇気はなかった。
卒業間近の受験生である3年生の先輩に恋だなんて────きっと、わざわざ相談したところで、相手を困らせてしまうだけだろう。
唯一松本先輩に会えるチャンスは、水曜日の給食委員の仕事のときの、ほんの一瞬だけ。
しかし、毎週会えるわけではない。
この学校では、給食当番は2週間ごとに交代する。
だから、給食委員の仕事で松本先輩に会えるのは、1ヶ月に2回だけ。
もう、会えるチャンスは、片手で数えられるほどしか残されていない。
なのに────いざ先輩を前にすると、何も言えなくなってしまう。
せめて「受験頑張ってください」の一言だけでもかけられたらいのに────そう思っていても、いつも「こんにちは」の5文字を言うだけが精一杯なのだ。
どうすればいいんだろう。
どうすればいいんだろう。
考えても考えても、どうにかする方法は思い付かず、ただ胸の中を先輩への想いがぐるぐるぐるぐる回るだけの毎日。