あの夏の続きを、今


そして、8時になったので、部員たちは楽器を片付け、それぞれ先輩に渡す物を持って、音楽室を出る。


私たちは3年生の自転車置き場で、先輩たちがやって来るのを待つ。


外はまだ寒いけれど、日なたに出ると、早春の朝に特有の、切なくも暖かな日差しが降り注いでくる。


冷え性の私は、指先を何度も吐息で温めながら、カリンやアカリ先輩と共に、松本先輩が来るのを待つ。


自転車に乗って校門から入ってくる生徒の顔を一人一人確かめていく。


そして────



「あっ……松本先輩だ!!」



やっと、見つけた。


眼鏡をかけていて、背は高く、人好きのする顔立ち。


間違いない、松本先輩だ。


その姿を見ただけで、顔は熱を帯び、心臓はドキドキと高鳴り出す。


「カリンっ、あれ松本先輩だよ!」

「あ、ほんとだ!アカリ先輩、行きましょう!」


そして、私たち3人は、松本先輩のもとへと駆け寄った。
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