あの夏の続きを、今


「じゃあ今度は、楽器をつけて、吹いてみよう」


そう言って先輩は、トランペットを持ってきた。


「じゃあ、ここにマウスピースを差して、……持ち方は、こう。ここに薬指を引っかけて………」


先輩はトランペットを差し出し、私のすぐ隣に来て持ち方を教え始めた。


腕と腕がくっついてしまいそうなほどに近付いたその距離に、私は少し戸惑う。


「じゃあ、さっきと同じ要領で、もう一度吹いてみよう」


トランペットを構えて、息を吸って、吹いてみる────



プァーーーーーーっ。



「お!1発で出た!すごい!!」


その先輩は、初めて見た時と同じ、あの優しい笑顔で、私を褒めてくれた。


先輩の笑顔には、やっぱり、あの時見たのと同じ、不思議な魅力がある気がする────


もし吹奏楽部に入ったら、トランペットをやってみようかな、なんだか楽しそうだな、と思い始めた。


華やかに主旋律を奏でるその音は他のどのような楽器よりも目立っているし、先輩も優しそうだし────
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