あの夏の続きを、今
そのまま話を続けながら歩いて、靴箱で靴を履き替える。
「セイジが人のことを心配なんて!一番似合いそうにない言葉なのにね」
「うっせーよ。それよりお前、何悩んでるんだよ。もしや、恋の悩みとかぁ?」
そう言ってにやにや笑いながら、私を指差すセイジ。
うっ、図星…………なんて言えるわけない!
セイジのことだから、好きな人がいるってバレただけでも馬鹿にされるに違いない!
「別に?なんでもないよ。セイジには分からないこと」
幸い、「本当は図星です」ということは顔には現れなかったみたいで、セイジは「あっ、そう?」とだけ言った。
そして、「じゃあ、お先に〜」と言って、階段を1段ずつ飛ばしながら勢いよく走って上っていった。
「セイジって人は、ほんとにわけわかんないね……」
そう独りで呟きながら、重い足を一生懸命動かし、私も階段を上っていった。
泣いても笑っても、明日が最後だ。
もう、私に出来ることは────明日、最高の演奏を届けることだけだ。
明日。私の心の全てを、私の演奏に込めよう。
心の中でそう決意して、私は遥か上の4階にあるB組の教室へと向かっていった。