あの夏の続きを、今
式が終わった後、吹奏楽部員は音楽室に戻り、楽器を片付ける。
そして、「花道」を作るため、音楽室を出て、昇降口と運動場の間の辺りへと出ていく。
この後、在校生たちは、昇降口から運動場の方へと続く花道を作り、そこで3年生を送り出すことになっている。
この花道が、松本先輩と話せる、最後のチャンス。
もう、お別れとなってしまう悲しい運命は止められないけれど、それでもせめて、最後ぐらいは笑って送り出したい。
最後にもう一度、あの優しい笑顔が見たいし、私も松本先輩の前では笑顔でいたい。
だから、この花道で、松本先輩が私の前を通る時に、「先輩!!」と言って、笑顔で手を振ろう。そう考えていた。
次々に在校生たちがやって来て、昼前の暖かな太陽に照らされたこの場所へ集まってくる。
私はリサと合流し、話をしながら在校生たちが全員集合するのを待つ。
そして、左右にずらりと並んで、花道を作った。
私はリサの隣に並んだ。
もう少ししたら、先輩たちがやって来るはずだ。
やがて、放送のスピーカーから、「3月9日」が流れ出した。今度は合唱ではなく、原曲だ。
そして、昇降口から、一人また一人と、卒業証書を持った3年生が現れ始めた。
笑顔の人もいれば、涙を流している人もいる。