あの夏の続きを、今
「トランペットはかっこいいし、とっても目立つし、ほんとにおすすめだよ」
「ぜひトランペットに入ってもらわないとね!今、2人しかいなくてけっこう大変みたいだし」
私の周りにいた女子の先輩たちが次々にそんな事を言う中、その中の一人がこんなことを言った。
「マイちゃんの後継者として、優秀な人材になりそうだよね〜」
するとその瞬間、眼鏡の先輩────松本先輩の表情から、ふっと笑顔が消えた。
「そっか……やっぱり、僕だけじゃ……」
松本先輩は何やら少し寂しそうな表情でそんなことを言った。
それと同時に、辺りが水を打ったように静まり返る。
「……どうしたんですか?」
私がそう聞くや否や、近くにいた別の女子の先輩がすかさず、先ほどの女子の先輩に向かって「ちょっと、そんな言い方したら失礼でしょー!それじゃまるで、松本くんとアカリちゃんがめっちゃ下手な人みたいじゃん!」と言った。
その人は「そうだったね、松本くん、ほんとごめんなさい」と言うと、松本先輩は「いや、いいよ、いいよ。僕だって、まだまだ足りない部分はあるし」と苦笑いで言った。
「さ、せっかく1年生来てるんだから、もっと盛り上げてこーよ!」と、女子の先輩の一人が大きな声で言う。
そして、何事もなかったかのように、先輩たちはまた楽しそうな表情に戻っていく。
「ごめんね。さっきのは気にしなくていいからね」
「どう?トランペット、気に入った?」
「よかったら、他の楽器も体験してく?」
私は先輩たちに次々にいろんなことを言われ、結局私はその後ほぼ全ての楽器を半ば強制的に体験させられることになった。
だけど、その中で私が一番「やりたい」と思ったのは────トランペットだった。