あの夏の続きを、今
第3章 〜夢〜
生まれ変わる時
【2015年 3月下旬】
今は春休み。3月が終わるまであと少しだ。
その日、私たち吹奏楽部員はいつものように部活に行き、音楽室で合奏をしていた。
今、練習しているのは、入学式で演奏する曲と、吹奏楽祭で演奏する曲。
今は、入学式の入場曲として演奏する、「アルセナール」を合奏している。
パーン、パーン、タタターン!
最初のファンファーレの決まり具合はまあまあといったところだろうか。
私は松本先輩が卒業してから、これまでよりももっと本気で練習に取り組み始めた。
いつか再び一緒に演奏することになるであろう、松本先輩に誇れる演奏ができるようになるため。
常に自分の音がどう聞こえているか気を配りつつ、技術の向上を図っていた。
以前、アカリ先輩が学校を休み、トランペットパートが私とカリンだけになった状態で合奏をしたことがあった。
その時の演奏の仕上がりはあまりにひどいものだった。
そして、私は気が付いた。
今までは、少々吹けない所があっても、「先輩がいるから大丈夫」と思って、あまりそこを徹底して直そうとしないことも多かった。
だから、これからは、先輩に頼らなくてもできるようにしなければいけない。
あと5ヶ月ほどで、アカリ先輩は引退なんだから、その時になっても困らないように。
そう考えていた。