あの夏の続きを、今
────その後、3月31日までの間、部員たちの間では顧問が変わることに関する話題でもちきりだった。
新しくやってくる寺沢先生はどんな感じだとか、怖いかどうかとか、西島先生がいなくなったらこの部はどうなってしまうんだろうとか、今年のコンクールは最優秀賞間違いなしだと思う、とか。
みんな、期待と不安とでいっぱいだった。
私も、強豪校から先生がやって来たら、コンクールでは上の成績を目指せるという期待はあった。
しかし、「天使」と呼ばれる西島先生のゆるい部活に慣れきっている私が、今までより厳しくなるであろう指導についていけるのか、という不安もあった。
3月31日に部員たちはお別れ会を開いた。そこで、西島先生はこう言っていた。
「これからJ中学校吹奏楽部がどのような方向へと向かっていくのか、それは私にも分かりません。
ですが、ここにいる皆さんは、1年間、あるいは2年間、それぞれが一生懸命に音楽に励んできたはずです。
ある目標に向かって頑張っていく、そういう部活動の本質というものは、たとえ先生が変わって、目標も変わったとしても、変わらないものであるはずです。
だから、皆さんは、これからも前向きに目標を持って頑張っていけば、どんな時でもやっていけるはずです」
普段は穏やかな西島先生にしては珍しい、しっかりと意志のこもった声だった。
その言葉は、私の心に深く深く響いていった。