あの夏の続きを、今
そして────新しい先生のやって来る、4月1日になった。
その日は9時からの午前練になっていて、10時まで個人練習とパート練習、10時からは新しい先生との対面と、初めての合奏だ。
個人練習やパート練習の間、部員たちの表情は様々だった。
期待に胸を膨らませている人もいれば、不安と恐怖に怯えている人もいた。
みんな、頭の中は新しい先生のことでいっぱいだった。
10時が近づき、合奏のために部員たちがそれぞれの練習場所から音楽室に戻ってくると、緊張はいっそう高まった。
これから、私たちはどうなってしまうんだろう。
これから、私たちはどんな方向に向かっていくんだろう。
そんな思いで、いっぱいだった。
そして────
10時ぴったりに、音楽室のドアが、がちゃり、と開いた。
部員全員がそれに反応し、ぴたりと音出しをやめる。
そして、初めて見る顔の中年男性が入ってきて、指揮台のほうに向かって歩いていく。
部員たちが、一斉に立ち上がった。
合奏を始めるときには、全員起立して、「よろしくお願いします」と言うのがこの部のルール。
新しい先生が指揮台に立ち、私たちと向かい合うと、部長さんが「よろしくお願いします!」と言う。
それに続いて、他の部員たちも一斉に『よろしくお願いします!』と言う。
そして、礼をしてから、椅子に座った。
新しい先生が話し始め、部員たちはまじまじと先生の方を見つめる。
「吹奏楽部の皆さん、えー、はじめまして。K中学校から来ました、寺沢 弘樹(てらさわ ひろき)です。
これから、一緒に頑張っていきましょう」
寺沢先生。一体、どんな指導をしてくださるんだろう。
期待と不安で、胸がはち切れそうだ。