あの夏の続きを、今


そして……ようやく「アルセナール」の合奏になった。


寺沢先生が言う。


「ここに来る前に、西島先生に去年のコンクールのDVDとか、文化祭のステージの映像とか、いろいろ見させてもらったんだけどな、

君たちの演奏は、自分たちしか楽しんでない。ただの自己満足なんだよ。

今までずっと、ゆるーくやってきてるから、何から何までいい加減になってしまってる。

でも、そんな演奏じゃお客さんは楽しめないんだよ。

だから、ここで俺と出会ってしまったからには、俺についてきなさい。

本当に聴く人が楽しむことのできる、本物の音楽を目指していこう、な?

そのためには、細かいところまで、練習の徹底だ」


一つ一つの言葉が、ずしん、と響いてくる。


確かに、今までの私は、自己満足な演奏しかしていなかった気がする。


目の前にいる大勢のお客さんのことも考えず、自分が満足できればそれでいい、そんな演奏ばかりしてきたかもしれない────


そして、寺沢先生が指揮棒を構えた。
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