あの夏の続きを、今
「じゃあ、今のところ全員でもう1回」
そう言われて、全員が楽器を構える。
私は今回は2ndを担当している。私の左隣ではアカリ先輩が1st、右隣ではカリンが3rdを演奏している。
────パーン、パーン、タタターンッ!
だが、またしても2小節で止められてしまった。
「そこに音符はないのに、なぜそこで音を伸ばす?タタタッ、て、2小節目の3つの音が終わった後は、休符しかないだろ?」
────うっ。確かにそうだ。
楽譜に書かれている3つの16分音符の後には、確かに休符しかない。
なのに、私は何も考えず、普通に音を伸ばして吹いていた。
先生の言う通りだ。私は今まで何も考えずに適当にやってきてたんだ。だから、こんな単純なことにも気付かなかったんだ。
できるようになったのではない。できるようになった「つもりになった」だけだったのだ。
やはり、素晴らしい音楽を作り上げるって、簡単なことではない。
「もう1回!」
寺沢先生が指揮棒を構え、もう一度その部分を吹く。
────パーン、パーン、タタタンッ!
「音の切れがまだ悪い!もっと、短く切るんだよ。もう1回!」
────パーン、パーン、タタタッ!
ここまで来て初めて、止まることなる2小節目から先へと進んでいった。
そして、練習番号Aまで入った所で止められた。
「ピッチがひどすぎる!聞いてられない。何のためにチューナーがあるのか、よく考えろよ」
……そんなにひどいピッチだったのか。今までの何も考えていない演奏に慣れきってしまっている私は、聞いていても分からなかった。