あの夏の続きを、今


それから1週間と数日が過ぎた。


寺沢先生との初めての本番である入学式での演奏も、本番直前の練習まで散々に言われつつも何とか無事に終わった。


そして、今日と明日は1年生の部活見学の日になっている。


今日は合奏見学、明日は楽器体験をすることになっている。


いよいよ、私も先輩になるのか。なんだか緊張する。



放課後、音楽室に行くと、部屋の真ん中あたりの椅子に座った部長さんが、頭を抱えて「うわーーーー、やらかしたーーーーー!もう駄目だーーーー!」と言っている。


「どうしたんですか、先輩?」と私が声をかけると、部長さんは苦笑いしながら答えた。


「いやー、実はね、今日の5時間目の、1年生への部活PRの時に、私、数人の3年生と一緒にアンサンブルをしたのよ。

だけどね、私、緊張しすぎて、出だしのタイミングも音も思いっきり間違えちゃって!!

1年生の人たち、みんな大爆笑してて!もう恥ずかしかったーー!!

これで新入部員0人とかだったら私のせいだよ!ねぇ?」

「いやー、先輩は面白い人なんで、あっ、良い意味ですよ?面白くて、みんなに好かれる人なんで、先輩のハプニングのおかげで『吹奏楽部って面白そうだな』って思った人、少なくとも100人はいるはずですよ!だから、大チャンスなんじゃないですか?」


私が笑いながらそう答えると、部長さんは、「いやー、照れちゃうなー」と言って頭を掻いた。


音楽室には次から次へと部員たちがやって来て、合奏の準備や、見学に来た1年生が座る椅子の準備をしている。


寺沢先生には、「今日と明日でとにかく1年生に媚を売りまくれ、一旦入ってしまえば後はこっちのものだから」と言われている。


やがて────


音楽室のドアの外に、見慣れない人たちの姿が一人二人と見え始めた。
< 195 / 467 >

この作品をシェア

pagetop