あの夏の続きを、今
その次の日の放課後。
今日も、1年生の部活見学の日だ。
今日は、予定通り楽器体験をさせてあげることになっている。
傾き始めた太陽の、金色の光が差し込む音楽室に行くと、既に何人かの部員たちが、1年生に吹かせる楽器の用意をしている。
その中にアカリ先輩やカリンの姿は見当たらなかったので、私は音楽室の隣の準備室に行き、1年生のために用意する学校の楽器をいくつか取り出し、音楽室に持っていった。
その中には、私やカリンが自分の楽器を手に入れる前に使っていたものもある。
どれもボロボロなものばかりだけど、1年生に少し音出しを体験させるぐらいならこの程度でも大丈夫だろう。
私はそれらの楽器にオイルを差して、軽く手入れをする。
その間に部員たちがどんどん音楽室にやって来る。
しばらくするとカリンもやって来て、楽器の用意を手伝い始めた。
だが、アカリ先輩の姿がどこにも見当たらない。
どうしたんだろう。今日は見学に来る1年生にいろいろ教えてあげなければいけないから、アカリ先輩がいないと困るのに。
オイルを差すのが終わったので、私とカリンは廊下の水道でマウスピースを洗う。
「アカリ先輩、どうしたのかなー」
「もしかして、休みじゃない?」
カリンとそんなことを話していると、後ろで楽器を手入れしながらその会話を聞いていた部長さんが言った。
「アカリちゃんはねー、今日、風邪で学校休みだって」
「「えーーーーーーーーーーーー!?」」
私とカリンは顔を見合わせた。
「どうしよう、アカリ先輩がいないんだったら、私たちだけで1年生に吹き方教えないといけないよね…」
「えー!?カリン、そんなの無理だよー!教えるなんて、カリンにはできないー!志帆、助けてー!」
「助けてって言われても……私にも無理だよー…知らない人を相手に、教えるなんて、そんな……」
私もカリンも、アカリ先輩がいないのにうまく1年生の相手をできるかどうか、不安でいっぱいだった。