あの夏の続きを、今
第1章 ~出会い~
始まりの日
【2014年 4月上旬】
自分の部屋のクローゼットの扉の裏側にある、大きな鏡。その前に立つと、目の前に真新しい制服を着た自分の全身が映った。
スカートを整えてから、肩より少し下の辺りまである、長く真っ黒な癖毛を頭の横できゅっと結ぶ。
ついこの間まで小学生だった人が、初めて中学校の制服を着ている姿。
自分自身でその姿を見ても、なんだか不慣れというか、不釣り合いというか、……なんて言ったらいいのか分からないけど、違和感のようなものを感じる。
けれど、それと同時に、少し背伸びした気分にもなれる。
いかにもド田舎の公立中学校という感じの漂う制服だけど、私にとってはそれが、私を今までの何倍も大人にしてくれる、そんなものに感じられた。
中学校って、どんな世界なんだろう。
どんな出来事が、私を待っているんだろう。
────私は、広野 志帆 (ひろの しほ)。
今日から中学生になる、ごくごく普通の女の子。