あの夏の続きを、今


私は多目的教室から椅子を音楽室に運び、音楽室の前の方に並べた。


それから、この前の楽器体験の時と同じように、1年生用の楽器を用意する。


去年も今年と同じように、何日間かかけて1年生全員に全ての楽器を体験してもらい、それを参考に担当楽器を決めるという。


楽器を用意していると、前の方に並べた椅子の辺りに、ぞろぞろと見慣れない顔の生徒たちが入ってくる。


これが、全部、新入部員なんだろうか。


信じられないほどの人数だ。


私の隣で楽器の準備をしていたカリンが、1年生たちの方を見ながら、突然、「あっ、アズサちゃんだ!」と声を上げた。


「アズサちゃん?」と私が聞くと、カリンは、「こないだの楽器体験で最初にカリンのとこに来てくれた子だよ」と答えた。


古いケースから学校の楽器を取り出すと、懐かしい匂いと感触が、まだ私が自分の楽器を持つ前の、初心者だった頃の記憶を思い出させる。


あの頃は何から何まで、松本先輩に頼りっぱなしだったっけ。


もう、あれから1年か────


とてつもなく長いようにも、とてつもなく短いようにも思えた1年間だった。



やがて、新入部員も含め、部員全員が音楽室に集合すると、部長さんや寺沢先生の挨拶、そして1年前と同じような、でも少し違う、部の活動内容や方針の説明があった。


音楽室の前方に座っている21人の新入部員たちは、真剣な目つきでそれを聞いている。


私はその中に知っている人がいないか、目だけを動かして探してみる。


同じ小学校から来た人が数人、そしてユイちゃんとエリカちゃんもいた。
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