あの夏の続きを、今


その人────シオリ先輩は続ける。


「東神高校吹奏楽部の定演は、6月×日の日曜日に、S町文化会館であります。

チケットは1枚500円で、他の高校の演奏会よりも安いので、皆さんにもぜひ来て頂きたいです。

チケットが欲しい人は、私か、妹のアカリにお金を渡して、チケットをもらってください」


そう言った後、シオリ先輩は、何かが書かれた小さな紙の束を取り出して、前の方に座っている部員に渡した。


それを受け取った人から、隣へ隣へと紙が配られていく。


後ろのほうのトランペットの所までそれが届くのを待つ間も、私の心は期待と高揚で満ち溢れていた。



東神高校の定演、絶対に行きたい。


松本先輩がいるかもしれないから。


松本先輩のトランペットの音を、もう一度聴けるかもしれないから。


松本先輩と、再会できるかもしれないから────


「また会える日」が、やって来るかもしれないから────



やがて、私の手元にも、シオリ先輩の配った紙が届いた。


細長い小さな紙には、手書きの文字で、定演のお知らせなどが書かれていた。


紙の隅っこには可愛らしいキャラクターのイラストも描いてある。


どうやら全部、シオリ先輩の手作りのようだ。


私はその紙に目を通した。
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