あの夏の続きを、今
その後、部長さんからの連絡が終わり、部員たちは各自、個人練習の場所に移動する。
私は先にチケットを買うためにシオリ先輩のところに行こうとしたが、先輩は寺沢先生と何やら話をしている。
なんとなく聞き耳を立ててみる。先生が何か話しているのが、途中から耳に入ってきた。
「…………は元気にしてるのか?色々と複雑な事情を抱えてるから、卒業した後もいろいろと心配でな」
寺沢先生がシオリ先輩にそう話しかけたのが聞こえてきた。
「……マイちゃんですか?あの子は……」
シオリ先輩がそこまで言った時、私はふと気がついた。
─────「マイ」。前にもこの名前をどこかで聞いたような気がする。
けれど、どこで聞いたのか、思い出せない。
「……って、ちょっと待ってください、よく考えたら先生今年ここに来られたばかりですよね!?なんで知ってるんですか!?」とシオリ先輩は続ける。
「俺、去年までK中学校にいたからな」
「あ、そっか、……だから知ってるんですね!すごい偶然じゃないですか!」
「そういうことだ。あいつが東神高校に進学してからどうなったのか、全然知らないからな」
「あの子は……残念だけど、吹部には入らないつもりみたいです。でも、他にやりたいことがあるのなら……」
その後も何やら話し込んでいたが、私には何の話だかさっぱり分からなかった。きっと本人同士にしか分からない内情のようなものがあるのだろう。
二人の話は長引きそうなので、チケットは練習時間が終わってから買おうと決めた。