あの夏の続きを、今


私は楽器と譜面台と、その他のいろいろな小物を持って、いつもの体育館横へと向かう。


いつもの場所に譜面台を立てて、音出しとチューニングをし、基礎練に取りかかろうとしたところで、カリンも階段を降りてこちらへとやって来た。


ロングトーンを始めようとした私に、隣で譜面台の準備をしているカリンが話しかけてきた。


「志帆は、東神の定演、見に行くのー?」

「……んー、そうだな、見にいこう、かな、とは思ってるね」


────本当は、私の心の中は、「絶対見に行く!!!!」という気持ちでいっぱいなのに………


カリンに本当の理由を悟られたくなくて、誤魔化してしまっている自分がいた。



────“ないない、そんなことは絶対ないと思うよ!”



松本先輩のことを打ち明けようとした時の、あのカリンの言葉が脳裏に蘇る。


また、あんなふうに思われてしまってはたまらないから。


胸が、ちくりと痛む。
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