あの夏の続きを、今


電車に乗り、会場の最寄り駅のS駅で降りると、私たちの地元とは違う、整然と建物の並んだ町並みが現れた。


そこから少し歩いて、会場のS町文化会館へ向かう。


私たちの他にも、同じ場所に向かっていると思われる人たちがたくさん歩いていた。


みんな、定演を見に行く人たちだろうか。


履きなれないパンプスが、こつ、こつ、と音を立てて、太陽に照らされた歩道のアスファルトを鳴らす度、胸の鼓動はどんどん速まっていく。


一歩一歩、私は、松本先輩に近づいているんだ────


やがて、会場に着いた。


時計を見るとちょうど会場時間の数分前で、建物の前には既に長蛇の列ができていた。


「すごい……こんなにたくさん人来るんだ…」

「演奏会って、こんな豪華なんだね……てっきり私、学校の体育館かどこかで、文化祭的なノリでやるのかと思ってたよ」


私たちJ中学校の吹奏楽部には定期演奏会というものがないから、吹奏楽をやっている私でさえ、定期演奏会というものがどういうものか、よく知らなかった。


だから、私もリサも、予想以上の規模の大きさに驚いていた。


やがて、会場の時間になり、列が動き出した。


私たちもその列に並んで、会場のロビーに入り、チケットを切ってもらって、パンフレットをもらってから、ホールに入った。


冷房のよく効いたホールは、その大きさこそ及ばないものの、吹奏楽祭やコンクールの会場として使われるK市民会館と同じように、本格的な造りのホールだった。


「志帆、どのへんの席に座るー?」

「んー、そうだな、ユーフォがよく見えそうなところ」

「って……どこ?」

「そうだな……じゃあ、このへん!」


私とリサは、真ん中の列より少し上手側、1階席の後ろのほうに座った。
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