あの夏の続きを、今
そして、松本先輩だけを瞬きもせず見つめているうちに、1年生も一緒に演奏する3曲は終わってしまった。
1年生がステージから出ていく。
行かないで……もっと松本先輩の演奏を聴いていたい……松本先輩を見ていたい……
そう思いながら、松本先輩の背中を、見えなくなるまで見送り続ける。
1年生が全員ステージを出てから、2、3年生だけでの演奏があった。
そして、そこで第1部は終わり。
『ここで、約15分の休憩に入ります』
客席が明るくなり、アナウンスが流れると同時に、一気にたくさんの人が動き出す。
私は席に着いたまま、きょろきょろしていると────
「あっ!!!」
「何、どーしたの?」
「先輩だよ!松本先輩!」
先ほどステージで演奏していた、制服姿の1年生たち────もちろん、その中には松本先輩もいる────が、ホールの中に入って来たのだ。
「きゃーーっ、先輩だ、先輩だあーー」
周りの人に聞こえないように、小さな声で喜ぶ。
「よかったじゃん!志帆、話しかけてきたら?」
「えっっ!?」
リサに唐突に「話しかけてきたら」なんて言われて、思わず戸惑ってしまう。
「そ、そんな、急に話しかけるなんて……恥ずかしいっ!!」
「恥ずかしいなんて言ってたら何も進展しないって!ほら、行ってきなよ!」
「えー、いや、でもーーー……」
私の顔がどんどん熱くなっていくのがはっきりと分かった。
恥ずかしいけど、でも……先輩と再会するために、ここに来たんだから、話しかけなきゃ意味がない!
「あ〜〜〜〜………じゃあ、リサ、ついて来てよ!一人は恥ずかしいっ!」
「はいはい、仕方ないね」
「リサありがとう〜!」
そして私は、激しく鳴る胸を押えながら、1階の隅の方で何人かの男子たちと話している松本先輩の所へと向かった。
リサもその後について行く。